しもじものたみ

生き抜け!コンクリートジャングル

トイレの記号でオーバーフロー ~ランドセルに思いを馳せて~

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先日、おしゃれな飲食店へ行った。不思議の国のアリスをモチーフにしたであろう内装がちりばめられた、メルヘンなお店だった。

この日は冷えていたので、入店早々尿意を催してしまった。「アリスモチーフの店なのだから、トイレに行くときは『お花を摘みに行く』じゃなくて『バラのお色を直しに行く』って言うのかしら」などと、どうでもいいことを考えながらトイレへ向かった。

 

トイレの扉の前に立ち、わたしはフリーズしてしまった。

 

どちらの扉を開けばいいのか、分からなくなってしまったのだ。

 

トイレの扉は二枚。それぞれ、こんな感じのマークがそれぞれ書かれていた。

 

※記憶をもとに再現


丸い図形は共通で、一方にはハート、もう一方にはスペードのような図形がくっついている。ハートは赤、スペードは黒になっていた。店の内装から察するに、トランプモチーフを取り入れたのだろう。

 

わたしを含めた、多くの日本人には、トイレ記号についての「形」と「色」の共通認識があると思う。

丸の下に逆三角形がついていたら「男性用」、丸の下に三角形がついていたら「女性用」トイレだと認識する。だいたいのトイレ記号にいる女性は、末広がりな体型だと相場は決まっている。

 

仮に記号が全く同じ場合であっても、片方に赤、もう片方に黒が使用されてたら、自分が入るべきトイレは区別できる。「赤」は女性用、「黒」は男性用トイレだという刷り込みのたまものだ。

 

この店のトイレ記号は、ハートが逆三角形、スペードが三角形を想起させるシルエットだったため、わたしは、「ハートが男性用トイレ、スペードが女性用トイレ」だと認識した。

しかし、違和感のせいで手がドアノブに届かない。長年の経験からすると、女性用トイレは「赤」、男性用トイレは「黒」のはずなのだ。

 

記号と色のはざまで思考がループし、脳がオーバーフローで処理落ちしてしまった。しばらく固まっていると、スペードが描かれたトイレから男性が出てきた。ありがとう名も知らぬ男性よ。わたしは意を決してハートが描かれた扉を開けた。そこには、洋式便所とサニタリーボックスが備え付けられた、よく見る光景が広がっていた。ほっと安心したけれど、「洋式便所は別に男性サイドにもあるだろうな...」と一抹の不安を抱え、どこか落ち着かない気分で用を足した。

 

トイレ記号の「形」は、肩幅と骨盤の大きさが男女で違うことを端的に表したものだろう。もしくは、スカートの有無のメタファーか。では、「色」はどこから来たのだろうか。わたしには、ランドセルの色以外で、赤と黒が持つ性別の差は思いつかない。

 

わたしが小学校に通っていた頃は、ランドセルといえば赤か黒だった。女の子のランドセルは、「ピンク寄りの赤」や「オレンジ寄りの赤」などの差異はあったが、赤の範囲を出るものは少なかった。男の子は黒一択。まれに、パステルカラーや紫のランドセルを身に着ける子がいたが、クラスに一人いるかいないかだ。祖母は「赤以外のランドセルなんかしょったら、学校でいじめられるでやめりん」と脅してきた。

時は進んで令和の世では、実に様々なランドセルを通学路で見ることができる。わたしの住んでいる地域では、茶色、紫、水色がトレンドのようだ。男子が寒色、女子が暖色のランドセルを身に着ける傾向はあるが、赤黒の2択しかなかった時代から考えると性別による色の制約はだいぶ薄まってきたようだ。

 

「赤は女の子の色、黒は男の子の色」なんて考えは、世代を経るごとにどんどん希薄になっていくだろう。そうなったとき、トイレ記号の色はどうなってしまうのか。男女ともに茶色になったり、パステルカラーが採用されたりするのだろうか。そうなったときのために、トイレ認識のアップデートをしておかないと、お縄覚悟のとんでもない過ちを犯すかもしれない。今後は、気合入れてお花を摘みます。

 

トイレのアップデートについていけず、再びオーバーフローする日が来ないことを祈ろう。おばあちゃんになったときにフリーズしたら、膀胱や括約筋の都合で、いろいろ手遅れになりかねないから。