コスプレ衣装を作ってみたら、なんだか全体的にボリュームが足りない、ぺしゃんこな衣装が出来上がってしまうことがあります。
ボリュームのあるスカート、常に広がったマント、空に向かって立つ髪飾り、風もないのに波打つリボンなど、アニメや漫画のキャラクターが身に着ける服は時々重力を無視したような作りをしています。このような衣装を形だけ真似ても重力に負けてしまいふんわり感のないシルエットになってしまう訳です。
今回は、衣装のシルエットを整えるのに大活躍する「セットアップテープ」を紹介したいと思います。
コスプレイヤー向けの記事ですが、ダンス衣装の制作や、ロリィタファッション、ドールのお洋服等にも使えると思います。
【目次】
セットアップテープとは
セットアップテープとは、手芸用品メーカーの清原株式会社のブランド「サンコッコー」から発売されている形状保持テープです。
針金のようにぐにゃぐにゃ曲げたりねじったりすることができます。
名前に「テープ」と付いていますが、セロハンテープや両面テープのように粘着面があるわけではありません。セットアップテープ単体では布にくっつけることができないので注意です。
幅は5mm と7mm、固さは「ハード
」と「スーパーハード」があります。
わたしは5mmのハードを愛用しています。
セットアップテープのいいところ
セットアップテープがどんなものかざっくりと伝わったと思うので、ここからはセットアップテープがどう活躍するのかを説明します。
衣装に縫い付けられる
セットアップテープは数本の細いプラスチック芯とそれをまとめる糸で作られています。
芯と糸がメッシュ状に配置されているので、針と糸を使って縫い付けることができます。
衣装に取り付けるのに接着剤がいらないのが大きなメリットです。接着剤が表地に染み出してシミになったり、接着が甘くて剥がれてしまうなんてことはありません。接着剤と違い一度縫い付けた後でも糸をとれば修正可能です。
手縫いはもちろんミシンを使って縫うこともできます。
家庭用ミシンを使って縫っていますがサクサク縫えます。待ち針が打てないので、クリップを使って仮止めするか手で押さえながら縫います。
糸と針は普通地用で問題なく縫えています。
洗濯ができる
セットアップテープと同じくぐにゃぐにゃ曲がって形状保持できるものと言えば、針金があります。セットアップテープの代わりに針金を使うこともできますが、注意すべき点があります。
それは洗濯です。
針金を使った衣装を洗ったあと、針金が錆びてしまい衣装が汚れてしまうことがあります。
セットアップテープであれば、錆の心配はありません。セットアップテープはプラスチック芯なので、水で洗っても錆びたり色落ちすることがありません。
また、縫い付けられるので洗濯機に入れてグルグル回しても外れないのもうれしい。ドラム式洗濯機の我が家でも衣装をネットに入れて洗濯すればセットアップテープが壊れることなく洗濯できました。
乾燥機は推奨されていないので注意してください。
汗をかく季節に着る予定の衣装にぴったりです。
目立ちづらい
セットアップテープは薄いので目立ちにくいです。
縫い付けるという特性上、どうしても縫い目がめだってしまいますが、裏地に縫い付けることで目立たなくすることができます。
セットアップテープは黒と白の2色が販売されています。
特に裏地が白または黒の場合は、裏地の表に直接縫い付けても目立ちません。
白と黒のどちらを買うか迷ったら、白を購入するのをおすすめします。白であれば、最悪ペンなどで色を付けて目立たなくできます。
衣装に着けても動きやすい
ボリュームのある衣装は立ったり座ったりという人間の基本動作ですら困難になります。衣装が重たい上に、自分の体の幅以上に衣装が広がり空間の認識が難しくなるからです。
セットアップテープはプラスチック製で軽いので、衣装に着けても重さがさほど変わらないというメリットがあります。少しでも軽くしたい衣装におススメです。
また、薄くて柔らかいので、簡単に曲げることができます。人混みを通るときは手でぎゅっと抑えて圧縮し、ひらけたところに出たら形を整えるなんてことも可能です。特に参加人数の多いイベントでは重宝します。
わたしが一番ありがたいと思っている点は、座るときにお尻が痛くないことです。硬い芯材を使った部分がお尻にある衣装の場合、椅子に座った時芯がお尻に刺さることがあります。あれは痛い。セットアップテープはお尻の重みでつぶすことができるので、刺さりません。
セットアップテープの注意点
セットアップテープは大変便利ですが、いいところだけではありません。ここではセットアップテープを使う上で注意すべきところを紹介します。いいところも悪いところも知ったうえで上手に使用しましょう。
価格が高い
セットアップテープは便利ですが、値段が高いため少し使用に躊躇してしまう面があります。Amazonや楽天などで購入するとなると、セットアップテープ1ｍあたり300～500円程度します。
100均に売っている針金と比べるとどうしても高く思えてしまいます。
特にドレスなど何ｍもセットアップテープが必要な衣装の場合、一着で3000円分ほどのセットアップテープを使うことになります。ちょっとした衣装が作れる価格です。
それでもセットアップテープは便利なのでわたしは使っています。
少しでも安く手に入れるために、わたしは20m巻きのセットアップテープを購入しています。20ｍ巻きの方が1ｍあたりの価格を抑えることができるので、大量に使う予定があるひとはこちらがおすすめです。
形状保持力は金属に劣る
セットアップテープが軽くて柔らかいことはメリットですが、形状の保持という点では金属の針金の方が優れています。プラスチック芯では重すぎたり長すぎる衣装の形状が保てないことがあります。
そういった衣装を着るときは、太い針金やボーン、パニエやクリノリンと併用することがおすすめです。
とはいえ、よほど重たい布を使った衣装でもないかぎりセットアップテープが負けることはないので、あまり心配しなくていいと思います。
この記事の最後には実際にセットアップテープを使用して作った衣装の例があるので参考にしてください。
端処理はしておいた方がいい
セットアップテープはハサミやカッターで簡単に切ることができます。工具がなくても扱えるのはうれしいです。
しかし、切りっぱなしにしていると、糸がほつれてプラスチック芯が四方八方に飛び出してくることがあります。
切り口を何度もこするとほつれやすいので、端処理をしておきましょう。
端を折り返して縫っておく、裏地の中に入れ込んでしまうなどの方法がありますが、わたしはライターで少しあぶって先端を溶かすことでほつれ止めをしています。
2秒ほど火にあてれば十分です。加熱しすぎるとドロドロに溶けてくるので注意してください。よく換気をしたうえで作業しましょう。
下の画像はライターであぶったセットアップテープの端です。プラスチック芯が溶けて糸と絡まりほつれない状態になっています。切りっぱなしの時に比べて、角が丸くなって肌当たりが多少良くなります。
セットアップテープを使った衣装例
ここでは過去にわたしがセットアップテープを使用して作った衣装を掲載しています。
使用したセットアップテープの量などもメモしておくので参考にしてください。
例1：ロングコートのすそにセットアップテープを仕込んだもの
この衣装は上着(白のロングコート)のすそにセットアップテープを入れています。
表地と裏地でサンドするようにセットアップテープを配置したので、写真ではセットアップテープは見えません。
セットアップテープのおかげですそが丸く広がっています。
長さがある衣装なうえ、前面に布がない設計なので大きく広がりません。本当はもう少し広げたかった衣装ではありますが、これが限界のようです。残念。
セットアップテープの使用量は3ｍ程度です。
例2：スカートのドレープを強調するためにセットアップテープを使用したもの
左右でデザインに差のあるスカートです。スカートの中にはパニエが履かれています。セットアップテープによってしっかり形を保っているので、この衣装は広がりの少ないシフォンパニエ(ソフトチュールパニエ)を使用しています。シフォンパニエはスカートを広げる力は弱いものの肌ざわりが良く軽いのでセットアップテープとの相性がいいです。
パニエについては以下の記事でも触れています。
向かって右側はセットアップテープを鋭角に折り、左側はウェーブ状になるように曲げています。そのため、右はすっきりとしたシルエットに、左はふんわりとしたシルエットになっています。
この衣装は裏地が黒なので、裏地に直接黒のセットアップテープを縫い付けています。
青の丸で囲んだ部分に黒のセットアップテープが写っています。が、ぱっと見ただけではわかりません。
このスカートで使用したセットアップテープの量は9ｍほどです。720度のスカートかつ4段分のフリルがあるので量が必要でした。
コスプレ用生地専門店のキャラヌノ のポリエステルツイル
とスタンダードサテンを使用してもこれだけきれいにドレープを出すことができます。これより重たい布で衣装を作らない限りセットアップテープは重みに十分耐えます。
長々と書きましたが、要するにセットアップテープを使うと簡単に衣装のシルエットがきれになるよということです。注意点を留意しつつぜひ使ってみてください。
