コスプレをしていると「自作衣装は安く済むらしい」という噂を耳にすると思います。
わたしは長いことコスプレしており、かつそのほとんどを自作衣装で楽しんでいるわけですが、自作衣装安い論に関しては懐疑的です。
確かに自作衣装は安い場合がほとんどですが、「安い」の裏には隠れた前提条件があったりします。
今回は自作衣装が安く済むという風潮に冷や水をあびせつつ、それでも自作衣装は安上がりだよという矛盾したことを話そうと思います。
【目次】
自作衣装は大して安くない
自作衣装が既製品衣装に比べて安くなることは確かにあります。しかし衣装を作っている体感としては既製品の7〜8割程度の値段で作れるといった具合で、べらぼうに安いというわけではありません。下手すると業者製衣装の方が安いこともあります。
これは自作しない人のイメージと結構乖離していると思います。
なぜ自作衣装が激安かのような風潮が生まれたのか考えてみます。
安い既製品衣装が簡単に手に入るようになった
昔々は大人用の既製品のコスプレ衣装はほぼありませんでした。ごく稀に同人サークルが一点物を仲間内だけで出品している程度だったと思います。既製品衣装というのは高くて入手困難だったので、庶民のお財布でコスプレを楽しむためには衣装を自作するしかありません。この時代は確かに自作衣装が既製品衣装よりずいぶん安かったと思います。
それが時代の変化とともに海外の業者の参入、ECサイトやフリマアプリの台頭などによりコスプレ衣装の値段は安くなり、入手も簡単になりました。衣装を自作するのにかかる費用に既製品衣装の価格が迫る勢いです。
確かに昔は自作衣装は安かったのです。時代は変わったのに「自作は安い」という言葉だけがひとり歩きしてしまい、現状とイメージが食いちがうことになっていると感じています。
手芸店の撤退とかさむ送料
衣装を自作する上でお世話になるのが手芸店です。布やボタンなどのパーツ、針や糸を購入して衣装を作るわけですが、街の手芸店がどんどん撤退、廃業しています。
衣装の自作において近くに手芸店がないというのは本当に不便です。わたしは地方の者なので、町の手芸屋さんにないものは電車賃を払って都市部の大型手芸店に行くしかありません。一回1000円程度の交通費ですが積み重ねれば結構な額になります。
今は便利な時代なのでネットで買うこともできますが、ここでも送料という問題がたちはだかります。糸一本買うにも送料がかかるわけです。もちろん必要な物をまとめて買うなどの対策はできますが、そもそもとして店舗よりネットの方が安いことはあまりありません。手芸店が身近にないというのは自作衣装の費用にじわじわとダメージを与えてきます。
自作衣装と既製品を比べる際、材料費だけで見ると自作衣装が既製品の半額程度ということは珍しくありませんが、そこに資材購入の交通費や送料を勘定にいれるとトントンになる、なんてことも。
自作衣装は安いというのは、材料費だけでそう判断している場合もあることに注意した方がいいでしょう。
こだわりを詰め込むと青天井
自作衣装は、自分の解釈どおりに衣装を作ることができるという醍醐味があります。色や生地の質感にこだわって理想の衣装を作るのはとても楽しいです。
しかし、材料にこだわりすぎるとどんどん費用がかさんでいきます。
自作衣装が安いのは、あくまで「そこそこの」材料で作った場合です。特殊な生地やパーツを使えばその分お金がかかります。
衣装づくりには道具代もかかる
衣装を自作するならミシンはほぼ必須です。両面テープや接着剤、手縫いで衣装を作ることもできなくはないですが、耐久面や見栄えを考えるとミシンがあるに越したことはないでしょう。わたしは安すぎるミシンはコスプレ衣装に不向きなので1万円程度のミシンが必要だと考えています。
となると、衣装を自作するためにはミシンをはじめとした道具代も勘定に入れる必要があります。衣装を自作しよう!と思い立ったときに何万円も一気に出費が発生するのは厳しいと思います。
自作衣装安い論は、こういった道具代を無視していることが多いです。
もちろん衣装づくりに必要な道具は毎回買い替えるようなものではないので、長年使えば誤差のような金額ではあります。
それでも自作衣装は「安い」
では自作衣装はコスパが悪いのかというと、わたしはそんなことはないと考えています。どんな物事にも一長一短があるわけです。
ここでは、自作衣装のいいところ、「安い」なと感じる部分について語ります。
詐欺や不達リスクが回避できる
わたしが考える自作衣装が「安く」済む一番の理由は、さまざまな事情で衣装が手元に届かないこと回避し、余計な出費を発生させずにすむ、というのがあげられます。
コスプレ衣装と詐欺は切っても切り離せません。写真と違うものが届く、住所とお金だけ取られて品物が届かないといったトラブルは頻繁に起こっています。Amazonなどの大手ECサイト経由だからといって安心かというとそうでもなく、衣装の買い手は詐欺と粗悪品を見抜く力が必要になります。
そして何とか良さそうな販売者を見つけたとしても、衣装が必ず、使いたい日までに、完全な状態で届くとは限りません。既成コスプレ衣装の多くは海外製です。輸送が雑で衣装が行方不明になったり、破損して届くことも珍しくありません。また、旧正月や生産国の祝日などとかぶった場合、納品が大幅に遅れるというのもあるあるです。
せっかくお金を払って衣装を買ったのに欲しいときに衣装が届かず、余計なお金を払って中古衣装を買ったり、急いで自作に切り替える、というのが一番無駄な出費だと思います。
その点、自作衣装であれば詐欺や荷物不達のリスクはありません。
自分で自分をきちんと管理し、計画通りに衣装を作ることが必要になりますが...
材料をこだわらないことで費用を抑える
先ほど「衣装の材料にこだわりだしたらかかるコストは青天井」と書きましたが、裏を返せば、自作衣装は自分でコストをコントロールできるとも言えます。
どうせ見えないところだから裏地はなしにする、合皮は高いから安い布でなんとかする、ここのパーツは目立つからちょっといい材料を使う、などと、力を入れたいところ、抜きたいところに応じて予算をつけることができます。
手と予算の抜きどころが分かるようになると、自作衣装はぐっと安くなります。
道具や材料がそろうほど低コストになる
ミシンやはさみ、針などの道具は何度も買い替えるものではないので、衣装を作るほど揃っていきます。また、衣装を作ったときに出た布のハギレや余りパーツを取っておくと、別の衣装で使えることも。
このように、道具や材料がそろい、別の衣装で流用できると自作衣装は安くなります。
また、衣装を自作するときに別の衣装で使いたい部分はあらかじめ着脱可能にしたりすることで流用前提で作ることもできます。
自分のコスプレスタイルに合ったカスタマイズができるのも強みです。
なにより、衣装を自分で作るというのは、とても楽しいです。思い通りにいかなかったり時間がなかなかとれなかったりと苦しい時もありますが、自分の好きなキャラクターの服を、ああでもないこうでもないと考察しながら3次元に落とし込むというのもコスプレの楽しみ方のひとつです。
自作衣装は巷で言われているほど安上がりで作れるわけではありませんが、こういった作る楽しみも踏まえると衣装づくりはコスパはかなりいい趣味になると思います。