しもじものたみ

生き抜け!コンクリートジャングル

あの日点いたライトの名前をわたしはまだ知らない

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自動車教習所で全コーナー乗り上げの記録を樹立してからというもの、できるだけ車の運転は避けてきたの。だってその辺の道に乗り上げていいコーナーも擦っていいガードレールもないんだもの。わたしは間違いなく公道に出てはいけない類の人間だ。

 

だけど、クルマ帝国愛知県で生きる上で車に乗らないというのは難しい。3か月に1回程度の頻度で、しかたなく、大変遺憾だが、不本意ながら、じくじたる思いで運転するイベントが発生する。40km程度なら原付で移動してしまうわたしが車に乗らざるを得ない状況というのは、たいてい天気がすこぶる悪いか、バカ長い距離を走破しなければならない時である。知らない間に財布の中で黄金に輝きだした免許も泣いている。わたしも泣きたい。

 

そんなわけで、先日も雨風乱れるなか往復100kmほど車で走るハメになったんですけども。雨粒にライトが反射してあまり前が見えないし、風で車体が揺れるしで本当に泣くかと思った。おしっこちびらなかっただけ褒めてほしい。

 

んで、ふとこの車を購入した時のことを思い出したの。走行中、走馬灯のように。昔の思い出などが駆け巡る一環で。

 

わが家の愛車N-BOX。ちなみに先代もN-BOX。先代は10年近くロクなメンテナンスを受けず乗り回されていたため、異音はするわ、雨漏りするわ、塗装は剥げ散らかってるわ、なぜか常に獣臭いわで満身創痍となっていたの。んで、2年前ついに致命的な故障が発生して走行不能に。買い替えでやってきたのが、現在我が家の駐車場に止まっているN-BOX二代目だ。

 

修理でもお世話になったホンダのディーラーで二代目N-BOXは見繕ってもらった。「N-BOXぐらいの大きさでN-BOXぐらいの燃費のN-BOXぐらいの値段の車ありますか?」と聞いたら「全部満たすのはN-BOXって車ですかね」と言われたので何も考えずに購入。「勝手が変わらないなら運転も慣れてていいわね~」なんてのんきに考えていたの。

 

ハンコをついて2週間ほどで「車届きました~」と連絡がきた。さすがホンダの主力商品、早い。早すぎてこちらの受け入れ態勢が全然整っていなかった。「納車日にあわせて有給とらなきゃね~」なんて夫と話した次の日に連絡が来ちゃったもんだから、「車誰が取りに行くの問題」が発生。夫が会社で休みの交渉をしてくれるとのことだったので、ひとまず安心して余裕ぶっこいてたの。

 

んで、左団扇をね、パタパタっとやっているとLINEがくるわけ。「ごめん。納車の日休めなかったわ」と。えーと、つまりこれはわたしが受取りに行く感じなんですか。なるほどね。

真っ先に、「なんとかウチに届けてもらえませんかね」と営業さんに電話したよね。そりゃもう必死に。そしたら営業さん、「えっ...できますけど、えっ?」と電話口で明らかに困惑のご様子。契約のときに「自分で取りに行きますぅ~」と言っていた客が突然届けにこいと言い出したらそら困惑もするわな。ごめんね、でも命の危機なの。「確認しますので、また折り返します」と返答をもらい、電話のまえで祈りをささげるなどして過ごしたの。

 

電話が鳴る。

耳に当てる。

「あの、配送できますが、その、お金かかりますけど...本当にいいんですか?ご自宅から店舗まで200mぐらいですよね...?」

 

あ、そっち?

わたしてっきり、急に配送をお願いしたもんだから人員の手配とかの面で困惑していたと思ったのだけれど。この距離で切羽詰まって配送を懇願する輩に対して困惑してたのね。なるほど~。

というか、ディーラーからウチまで200mしかないの?もっとあると思っていた。「200mと聞いたらなんかいけそうな気がしてきたので、やっぱり受取りに行く感じでもいいですか?」と手のひら返しをしてしまった。

 

納車当日。

歩いてディーラーに行くと、プレゼントを持った店員さんがお迎えしてくれた。わたしの性根は陰の者なので「アッ...エト...アリャトマス...ヘヘッ」と挙動不審な態度をとってしまった。あの店で変なあだ名つけられても文句言えない。

「車の状態を確認してください」と言われ、外に案内されると、そこにはピカピカのN-BOXが。「傷とかあったら大変ですからね!念入りに見ましょう!」とさわやかスマイルの営業さんと、一緒に車の周りを見て回った。この人は先代N-BOXがどんな状態だったか知っているはずなのに、傷のチェックをしてくれるなんて優しいな。わたしだったら「前の車よりはるかにマシなんで」つってさっさと引き渡しちゃうかも。

 

んで、外装は無事確認できた。続いて機能の説明をしてくれた。前のN-BOXにはなかった機能を中心に教えてくれた。でも、わたしがあまりにもピンと来てない顔をしてしまったもんだから、途中から「パドルシフト...あっハンドルの裏のボタンみたいなやつです。触らないほうがいいですね。」「ここにあるのがドライブレコーダーです。運転中は気にしちゃだめです。」といった具合で、わたしが生きて帰るうえで必要な機能と、不要な機能を切り分けて教えてくれた。ホスピタリティを感じる。

 

機能の説明も終わり、いざ運転。このとき実に半年は運転をしていない状態だったので、ジェットコースターの坂道登ってるときぐらい心臓がバクバクしていた。それを見てか、営業さんがね、運転席のドアを開けてなにか操作しながら話しかけてくれたの。

 

N-BOX はウンニャロロライトがかっこいいんですよね~点けときますね!」

 

なんて???

絶対に違うことだけは分かる。でも、ウンニャロロライトとしか聞こえなかった。

ウンニャロロライトあっけに取られていると、あれよあれよと運転席に乗るよう促され、「またのお越しを~」と見送られてしまったの。

頭の中はウンニャロロライトでいっぱい。でも公道に出た以上、200mを安全に走り切ることに神経を注がなければならない。家に着くまでの約5分、頭の中でウンニャロロがウンニャロロしていて大変だった。

 

なんとかウンニャロロせずに家の駐車場にたどり着く。頭の中はウンニャロロライトでいっぱい。急いで運転席から降りて点灯しているライトを探した。

でもね、この日は晴天も晴天。雲一つない晴れ。ヘッドライトですらかすむほどの日差しのなか、どこにあるかも分からない灯りを探すのは難易度が高かった。結局見つからず、光がよく見える夜を待つことにした。

 

夕日を見送り、満を持して夜。車のそばに行くと、そこには闇が広がっていた。

まさかのノー光り。ウンニャロロライト未点灯。エンジンがかかっていないことが悪いのかと、スタートスイッチを押すも光らず。帰宅した夫とも確認したが、ウンニャロロに相当するであろう部分は光っていない。光を頼りに探す試みは失敗に終わった。

 

光が無理なら、営業さんの言葉を頼りに探すしかない。「かっこいいんですよね~」と言っていたので、とにかくかっこいい場所を重点的に探すしかない。こうなったらもう意地だ。絶対ウンニャロロライトを探し出してやる。

 

ただね、本当に申し訳ないんだけど、かっこよさがね、ちょっとわからなかった。これは車のかっこよさを受容する細胞を持ち合わせていないこちらサイドの落ち度であって、ホンダのセンスが悪いとかそういう話じゃないよ。決して。もしかして、へそピアスみたいに「普段見えないところにアクセサリがあるのもまたかっこよさ」みたいな解釈で、ボディに埋め込まれたライトだったりしない?

 

結局、ウンニャロロライトは未発見のまま、現在に至る。

ウンニャロロとはどこにあるのか。正式名称は何なのか。

ウンニャロロライトはもしかしたら、わたしの知らない場所で輝いているのかもしれない。

もし光っているところを見つけたら教えてね!