こんにちは、たみです。
わたしにも過去、サラリーマンとして社会の歯車をやっていた時期があったの。窓のない部屋でシステムのバグと戦う労働をしていた。そこにはわたしと同じように全国各地からSEが派遣されて来ていた。北は北海道、南は沖縄までさまざまな県民が日夜PCの前で戦いを繰り広げていたのね。
んで、戦いが落ち着くと、県外から来ている人が必ずと言っていいほど口に出すのが
「愛知で観光しようと思うんだけど、どこがいいかな」
という言葉。
わたくし、生まれも育ちも愛知県民。なんなら先祖代々愛知県民。少なくとも曾祖父の代までは現在の愛知県に住んでいたことが分かっている。
そんなネイティブ愛知県民のわたしだけれど、愛知県の観光地でどこをおすすめしていいか全然わからない。何ならわたしも知りたい。この質問の最適解はなんなのか。
しかしわたしも同じ質問に毎回まごつくわけではない。無難な観光地はいくつかストックしている。たぶん愛知県民のほとんどは東山動物園と名古屋港水族館をストックしているはず。
でもね、そういう無難で、誰が行ってもある程度楽しめるスポットって県外の民はもう行ってたりするの。そしてそのような旅行好きの人は、地元の人のみぞ知る穴場スポットみたいなものを欲している。
愛知県の名誉のために言っておくけれど、そういうダークホース観光地が全くないわけではない。
この手のキャラクターでは頭一つ抜けてかわいい(とわたしは思っている)「しだみこちゃん」を擁する「志段味古墳群」と「しだみ古墳群ミュージアム」、
www.rekishinosato.city.nagoya.jp
愛知県のカレンダーすら支配する大企業トヨタ自動車の博物館「トヨタ博物館」、
焼き物の町常滑にある、行くだけで宝くじが大当たりしそうな「とこなめ招き猫通り」
などなど、愛知県には世間で言われるほど観光地がないわけではない。
じゃあなんで勧めづらいって、交通の便よ。
愛知県は車社会。どこへいくにも車が便利すぎるのだ。かといって「車で行くのがおすすめです」とは言いづらい。「名古屋走り」を代表とするアクロバティック走法を取り入れた車がそこらへんを走っているので、あまり慣れていない人には車移動を勧めたくない。会社名を背負ったプロボックスから、「赤ちゃん乗ってます」を掲げたのファミリーカーまでブイブイ言わせているもんだから地元民ですら怖い。なんだかんだ地下鉄が走っているあたりが一番観光地っぽいので、初心者は地下鉄圏で回れる範囲をおすすめしたい。
地下鉄圏内で、どこにも負けない、そんな観光スポットはないものか。
そうだ
上飯田線があるじゃない。
【目次】
名古屋市営地下鉄の路線全部言える?
名古屋市民に「名古屋の地下鉄の路線全部言える?」と聞くと、多くの人が、東山線、名城線、鶴舞線、桜通線を答えてくれるはずだ。人によっては名港線も入れて回答してくれると思う。名古屋市外の人でもだいたい3~5路線の名前が出てくると思う。
これは名古屋市営地下鉄の路線図。
よしじゃないんだよなあ。
愛知県民にすら存在を忘れられがちな「上飯田線」。路線図ではピンクであらわされるそいつは、他と圧倒的に違う点がある。
そう。
ものすごい短いのだ。
日本一の地下鉄・上飯田線
上飯田線に属する駅は上飯田駅と平安通駅の二駅のみ。1区間だけの地下鉄線だ。
どうしてこんなに短い地下鉄が誕生したのか。
名鉄小牧線は、愛知県名古屋市、春日井市、小牧市、犬山市を横断する路線だ。
現在では名古屋市への通勤・通学で大活躍しているこの路線だが、終点がどこともつながっていない、いわゆる「盲腸線」だった過去を持っている。
時は1971年、仮面ライダーが放映され、お茶の間に新たなヒーローが生まれた陰で引退したものがいる。名古屋市電御成通線だ。
御成通線は路面電車だ。市バスの普及などの理由で廃線となっている。
御成通線が廃線となると、大変困ったことが起きた。
小牧線で名古屋に行くのが困難になってしまったのである。
小牧線上飯田駅から御成通線に乗り、国鉄(現JR)大曽根駅で中央本線に乗ることで名古屋駅に向かうルートを利用していた小牧線ユーザーに大打撃である。
小牧線ユーザーが名古屋へ行くためには、市バスを利用するか、名古屋駅へ行ける駅(平安通駅)へ1kmの徒歩移動するかの二択だった。
小牧線ユーザーをなんとかして名古屋の地下鉄に接続させるべく、紆余曲折あったのち、ついに2003年名古屋市営地下鉄上飯田線が開業。あと一歩地下鉄に届かない小牧線を救うために0.8kmの日本一短い地下鉄が誕生したのだった。
小牧線と直通運転
日本一というのは、それだけで観光名所になりうる。日本一の富士山やスカイツリーが観光地なのだから、地下鉄(短さ)日本一の上飯田線もまごうことなき観光地といえる。地下鉄圏内で、ほかに負けない特徴をもつ立派な観光名所だ。
ザ・観光名所上飯田線だが、その特徴ゆえ観光が爆速で終わってしまうという悲しさを抱えている。始発駅の平安通駅から終点駅の上飯田駅まで乗車すると約1分。早すぎる。
そんなときは、そのまま電車に乗り続けてみよう。上飯田線は名鉄小牧線と相互直通運転のため、乗り換えなしで小牧線に乗ることができるのだ。
サボテンの町春日井市、工場いっぱい小牧市、そして犬山市を経由する小牧線。
終点の犬山駅から徒歩20分ほどで行ける犬山城は一見の価値あり。城下町には和風でおしゃれなお店が立ち並んでいる。
個人的には小牧線田県神社前駅から徒歩5分の田縣神社をおすすめしたい。
ここの豊年祭は”立派なもの”が奉納されるので興味のある方はホームページなどをのぞいてみてほしい。
愛知はもっと上飯田線を推してもいいんじゃない?
「日本で一番高い山は富士山と皆答えられるが、二番は答えられない。覚えてもらうには一番にならなければならない」という話があるが、とんでもない。一番なのに覚えてもらえていない上飯田線があるじゃない。
一番になろうと覚えてもらえないときはある。やるべきことをコツコツやるのが一番だというメッセージを上飯田線からは感じる。
愛知県には観光地がないなんて言われがちだけれど、こんなに立派な「一番」があるのだから、もっとプッシュされてもいいと思う。上飯田線を記憶に残る一番にするのは、我々愛知県民の仕事だ。
ということで、1分間で満喫できる観光名所上飯田線、ひいては愛知県をよろしくお願いいたします。
【参考文献】