しもじものたみ

生き抜け!コンクリートジャングル

ワクチンの副反応が地獄篇だった話

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どうも、たみです。
 
わたしもついに、ぶちかましました。
コロナのワクチン2回目。
 
お噂はかねがね聞いておりまして。とにかくやべえと。副反応がすげえと。わたしったらビビリなもんだからさ、思いつく限りの準備して挑んだ。普段体調を崩すことがないから、想像力をフルに活用した。もうね、ちょっとしたKY活動だった。薬よし!飲み物よし!体温計よし!
 
なんかね、全然噛み合わなくて。自分の準備を副反応がかいくぐってくるの。せっかくの準備台無し。しかもね、準備も悪かった。爪が甘い。KY活動全然できてなかった。
 
高熱にうなされながら、こう思った。
「地獄か?」
 
完全復活を遂げた今、己の身に起きたことを振り返ってこう思った。
「地獄篇では?」

 

地獄篇とは?

昔々ダンテという人が書いた「神曲」っつー詩がある。神曲のなかで、ダンテがなんやかんやで地獄巡りをするのが「地獄篇」。「煉獄篇」や「天国篇」もあるよ。
地獄篇における地獄は9層。それぞれの階層で人間が生前の罪に応じて罰を受けているよ。
わたしもさらっとしか理解していないけど。こんな感じ。
 

第一圏 辺獄~やれることはやれるうちに~

ワクチンの2回目を打った。1回目のときは、過剰に不安がって熱が上がったような気分になったり、頭痛や吐き気があるような気分になったりしたが、実際はただの思い込みだった。周りから「2回目はすっげえぞ」といわれていたから準備はした。でも、心のどこかで「いや1回目ちょろかったじゃん」という慢心があった。

その慢心から、この日は布団でごろごろして過ごし、寝落ちしてしまう。

風呂に入っていないことに気づかずに。

 

まさに地獄の第一圏辺獄の亡者だ。

辺獄の亡者は生前洗礼を受けなかった者の留まる場所だ。

キリスト教では、頭や体を水で清めることで洗礼とするらしい。

風呂に入らず、ただ無意味に時間を消費するわたしは、まさに辺獄の亡者。

 

このときは、副反応は全く出ていなかった。元気そのもの。

辺獄では、ほかの階層と違い罪の呵責は行われない。

つまりそういうことだ。

 

第二圏 愛欲者の地獄~サイゼリヤ狂い~

わたしは、サイゼリヤが大好きだ。叶うなら、人生最後の日に口にするのはサイゼリヤのメニューがいい。
風呂も入らずごろごろしていたわたしだったが、どうにも「サイゼリヤが食べたい」のである。今から家を出れば、ラストオーダーには間にあうという時間。
しかし、常識的に考えればここは安静にしておくべきである。いくら今副反応が出ていないとはいえ、今後出ないわけではない。それに、ラストオーダー直前に駆け込まれるサイゼの店員さんも気の毒だ。
わたしはサイゼリヤへ向かった。頭ではいろいろ考えたが、本能がサイゼを求めていた。
恋焦がれ、欲望に溺れたわたしの様は、愛欲者の地獄の亡者そのものだ。
実際、サイゼからは強風にあおられながら帰った。愛欲者の地獄では、亡者を罰するように強い風が吹き荒れているという。
 

第三圏 貪食者の地獄~フードファイト開幕~

帰宅し、サイゼリヤからテイクアウトした品々を前に小躍りする。
自宅でサイゼリヤをたしなむことができる。なんていい時代だ。
おっとこんなところにチーズがある。レーズンが入ったおいしいやつだ。これも食べよう。
なに?ヨーグルト?これも食べよう。
明日の朝食用のおかゆがあったな。食べよう。
バナナ。食べよう。
鯖の切り身。食べよう。
アイス。食べよう。
海苔。食べよう。
 
わたしの第一の副反応は、食欲増大だった。
とにかく腹が減る。食べても食べても満たされない。普段であればとっくに満腹な量を食べているのに、するする食べ物がのどを通っていく。頭の中は食べることで支配されていた。発熱などで食欲が落ちた時用にと購入した、ゼリーやヨーグルトなどを片っ端から食べてしまった。水もジュースもがぶがぶ飲んだ。
卑しく冷蔵庫をパカパカする様は、貪食者の地獄の亡者だ。亡者はケルベロスによって体を引き裂かれるが、わたしは自ら詰め込んだ食べ物で腹が引き裂けそうだった。
 

第四圏 貪欲者の地獄~ケチは身を亡ぼす~

大食いで膨らんだ腹の痛みに耐えていると、だんだん体の節々が痛んできた。

この痛みは心当たりがある。インフルエンザに罹ったときのそれだ。

熱を測ると、38度。まごうことなき発熱だ。

体温計で熱があるのを見ると、急激に体調が悪くなる。たぶん人類あるあるだ。

とりあえず水だ、水を飲まねば。ウォーターサーバーでコップをかざす。

 

ピチョン

は?

 

ウォーターサーバー、暴飲の果てに満を持して水切れ。

我が家のウォーターサーバーは水の入ったボトルをサーバー上部にセットしなければならない。つまり、この関節痛む体で、10kg近い水入りボトルを顔の高さにある差込口にセットしなければならない。

ならば、ペットボトルの水を飲もうと冷蔵庫へ向かう。しかし、冷蔵庫には1本しか飲料がなかった。理由は分かり切っている。ケチって買わなかったからだ。「うちにはウォーターサーバーがあるし、いらんでしょ」つって。いる。全然いる。もちろんこの1本を飲めばいいのだが、ここでもケチが顔を出す。結局ウォーターサーバーを痛む体で使った。

 

地獄篇の貪欲者の地獄では、ケチったり浪費した者が金の詰まった重たい袋を運んでいるという。たった数百円をケチってペットボトルを買わなかった哀れな女が、ウォーターサーバーのボトルを交換する様子と何が違うだろうか。

 

第五圏 憤怒者の地獄~当てつけよくない~

体温が38度~39度をさまよっているころ、重大な問題が発生した。

服がないのだ。

結婚してすぐのとき、夫と口論になったことがある。わたしの服が散らばっていて部屋が汚いことについてだ。わたしは、「タンスにはもう服を入れるスペースがないから部屋に散らばっているのだ。服の整理のためにはタンスを買い足すべきだ」、夫は「まずは服を整理してからタンスを買い足すべきだ」と、意見をぶつけ合った。片付けが先か、タンスが先か。このときわたしは、「じゃあ一生このちっさいタンスで服をやりくりしてやる!」と当てつけのように服を捨てた。今も春夏秋冬すべての服はこども用タンス1つに収まっている。そのせいで、2日ほど洗濯をさぼると、たちまち服の選択肢が激減する生活を送っている。

このときもすでに3日洗濯をしていなかった。もう服や下着のストックがない。憤怒者の地獄の亡者よろしく、怒りに身を任せた結果、身を滅ぼしたのである。

このころ、寒気が徐々に出始めていた。沼を掻くような足取りで、着れる服を探した。

 

第六圏 異端者の地獄~服は日常的に着よう~

寒気が強くなっていく。普段すっぽんぽんで就寝しているわたしも、副反応の前では無力だった。
服探しをあきらめて寝ようと試みる。布団にくるまれば暖かいだろうと。しかし、ここでも準備の甘さに苦しめられる。タオルケットしかないのだ。
よく考えれば、このとき9月。というかほぼ10月。そもそもタオルケットでは心もとない季節ではあるのだ。
布団はわたしの手の届かない位置にあったので、服探しに専念することにした。
日頃から、服を着て寝ていればこんなことにはならなかっただろう。
常識というものは、一見窮屈ではあるがいざというときわたしを守ってくれるものなのだ。それを衣類と一緒に脱ぎ捨ててしまったのだから、この報いは仕方がない。まさに 異端者の地獄の亡者だ。
結局厚手の服は見つからなかった。だから夫のスウェットを拝借した。服について夫に当てつけをしたわたしが、夫の服を借りる。なんとも皮肉である。
 

第七圏 暴力者の地獄 ~体温計は大切に~

地獄篇の暴力者の地獄は、暴力をふるったものが行く場所だ。暴力の内容に応じて3つの場所に振り分けられる。

このとき、わたしは技術に対する暴力の地獄にいた。

体温計が動かない。理由は明らかだ。計測しては投げ、計測しては投げ、とぞんざいな扱いを続けたからだ。「次39度以上熱があったら解熱剤を飲もう」と決心していた矢先の出来事だった。

神と自然と技術に対する暴力に対しては、火の雨が降りかかるという。体温が上がり続ける様は、火の雨の如し。

後日談だが、体温計は電池を替えたら直った。

 

第八圏 悪意者の地獄~人を呪わば穴二つ~

服を手に入れて、ようやく眠りにつくことができた。
が、3時間ほどで目が覚める。とにかく臭いのだ。
風呂に入らず、暴飲暴食し、発熱で汗をかいた。体臭がすごいことになっていた。
そしてダメ押しの生乾き臭。これは夫の服からだ。
生乾き臭に故郷の村を燃やされたわたしは、生乾き臭を絶対に許さない。普段であれば、即刻洗濯しなおしだ。しかし、この服は、ちょうど夫とプチ口論をしたときに洗濯したもの。「生乾き臭で苦しむがいい」といやがらせとして放置した代物だ。
人を呪わば穴二つとはよく言ったものだ。今回の場合穴二つもないけど。わたしの穴しかない。
悪意者の地獄には、糞尿の海があるらしい。相当に臭いんだろうな。このときのわたしのほうが臭かったりしない?大丈夫?

第九圏 裏切者の地獄~39度の死闘~

このとき、寒気がピークに達していた。体温は40度近くあるのに、一向に暑さがやってこない。冷や汗が背中を濡らし、より寒く感じる。

ここは裏切者の地獄。極寒の地で裏切り者が罰を受けるのだ。

寒さに震えていると、目の前を何かが横切る。

黒くて、足がわさわさと生えている。

虫だ。

この寝室に虫が出たのは2回目だ。

1回目は、春先。カーテンの隙間からコンニチハしていた。当時わたしはパニックになり、ゴキブリにまだ気づかぬ夫を一人置いて一目散に寝室から飛び出し、風呂場へ避難した。ご丁寧に寝室の扉は閉めて、だ。

寝室に一人残された夫は、ゴキブリと強制戦闘である。

これを裏切りといわず、なんとする。

いま、あの時の報いを受けているのだ。

熱でもうろうとする意識で、秘剣ザッシマルメターノを装備する。

ぽこんと叩くと、あっけなく虫は床に落ちた。

カメムシだった。

この部屋を支配する臭いに、新たな要素が加わった。

 

地獄のおわり

カメムシとの闘いで、わたしの体力は底をついた。

立ち込める臭いにも目が覚めることなく、深く眠った。深すぎて15時間近く寝てしまった。

起きたら、熱も下がり、痛む関節もすっかり良くなっていた。相変わらず体臭はえげつなかった。

わたしの地獄篇は終わったのだ。

 

地獄の門には『この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ』と記されれている。確かに希望も何もなかったが、これでわたしは晴れて抗体もりもり元気パワーを手にした(はず)。副反応に限っては、希望があるのだ。

 

これからワクチン接種をする皆さま、常識的に準備すれば大丈夫だと思いますので、わたしを反面教師に地獄を乗り切ってね。

 

それでは。