旦那は出張で長らく家を開けている。
昼下がりに専業主婦がやることはひとつ。
インディグネイションを放つことだ。
知らないアイコン
いつのまにかスマホのホーム画面の右上に知らないアイコンがあった。インストールした覚えのないアプリだ。名を「ショートカット」という。どうやらいつぞやのOSアプデに伴い標準機能となったものらしい。
ショートカットは、動作に名前をつけて保存ができる。わたは近隣の快活クラブを検索してマップに表示する動作を「快活行きてえ」で登録してあるので、見知らぬ土地でも快活クラブに迷うことなく到達できる。
ショートカットに登録した動作名をSiriに語りかければ、音声で操作も可能だ。つまりSiriに「快活行きてえ」とつぶやけば、Siriは近くの快活クラブを教えてくれる。なんてできたスマホだ。
まるで絵本に出てくる魔女と魔法だ。
魔女が呪文を唱えると魔法によってカボチャの馬車が出てくるのと、わたしがSiriにショートカット名を伝えるとスマホが特定の操作をするのに大きな違いはないのではないか。
SF作家のクラークは「充分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない」といった。今科学が魔法に追いついている。わたしは魔法使いなのだ。
魔法、使うっきゃない
わたしが実質魔法使いだということが判明したので、今回はテイルズシリーズにたびたび登場する「インディグネイション」を再現しようと思う。
余談だが、インディグネイションは宗派によって表記・読み方が異なる魔法のため、発言に用いる際は細心の注意を払おう。最悪宗教戦争に巻き込まれるので注意されたし。
iPhoneには雷属性の魔法を放つ機能は搭載されていない。仕方がないのでSiriに「インディグネイション」と命令するとツイートする機能を追加する。これで全世界に魔法を放つのと同義だ。
そしてこれがインディグネイションを放った時のツイートだ。
インディグネイション
— たみ@インターネット作文ウーマン (@tami_writer) September 6, 2021
素晴らしい。
これでいつ故郷が滅ぼされても復讐できる。
これで無類の強さを手に入れたわけだが、問題があった。
それは、成功率があまりよろしくないということだ。
どうもわたしの活舌があまりよくないのか、Siriがインディグネイションを拾ってくれない。何度も聞き返してくる。科学文明サイドのSiriには上級魔法は理解しがたいらしい。
基本に忠実に
インディグネイションには超かっこいい詠唱がある。わたしの好きなキャラは詠唱なしでインディグネイションを使うので省いてしまったが、ここは基本に忠実に、詠唱をするべきだろう。
Siriに向かって詠唱をするとインディグネイションとツイートするように設定を変更した。
詠唱後に放たれたインディグネイションはこちら
インディグネイション!!
— たみ@インターネット作文ウーマン (@tami_writer) September 6, 2021
最高だ。
これでいつ侵略者が来てもばっちり封印できる。
詠唱を省略したときに比べ、成功率がぐんと上がった。
ショートカット名の登録にコツがいるが、その調整を済ませればほぼ百発百中でインディグネイションを発動できる。
詠唱はリスク管理
今回の件で、詠唱はただかっこよく魔法を繰り出すための演出ではない。確実に発動させるための安全装置でもあるのだと身をもって知ることができた。
近年詠唱を省略した魔法がトレンドのようだ。詠唱を省略できる者の中には、「詠唱はダサい」「詠唱は無能がすること」と、まるで詠唱が悪しき風習かのように、詠唱を用いる者を小ばかにするやつもいる。確実に魔法を発動させるというリスク管理をしている者を笑うとは、魔法使いの風上にも置けない。
そのような者たちにインディグネイションの父の言葉を送りたい。
この世に悪があるとすれば それは人の心だ。
(エドワード・D・モリスン)